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2011/03/25 / phonda

センチメンタル・ジャーニー

思いがけぬ人との再会に潜む悲劇。

十代の頃にアルバイトをしていたレンタルビデオ店に、当時26歳で、あだ名も「26歳」という人がいた。

先日、家に帰ろうと駅の階段を下りていると、知った顔が目に入った。

「26歳」さんだった。

苗字を薄っすらと思い出したが、違うような気もしたし、かといって、「えーと、だいたい15年前だから……」と計算をして、「40代さん! お久しぶりです!」というのも、ナシだ。

ストレートに、「26歳さん!」にも抵抗がある。難易度が高い。

また、それとは別の点で、声をかけにくい状況でもあった。

26歳さんは、派手目なハッピを着て、ポケットティッシュを配っていた。

職業差別をするつもりはない。パッと「苦労」と「紆余曲折」が頭をよぎったのだ。なりふり構わず仕事中のところ、そんなに親しくもない人間に会ったら、なんとなくイヤな気がするだろう。

だから僕は、携帯電話を見ていたから気づかなかったという演技で、素通りすることに決めた。

 「よぉー! 久しぶりじゃなーい!」

26歳さんは思いっきり声をかけてきた。

 「あっ、ああ! どうも、へへ、お久しぶりじゃないですかー」

近況には触れないようにして、アルバイトを辞めたあとに誰と会ったとか、会ってないとか、差し障りのない話をしたと思う。覚えていない。

 「えっと、この後ちょっとあれなんで。帰りますんで。お疲れ様です! 頑張ってください!」

社交辞令のひとつも出てこない自分。お土産にと、ポケットティッシュをくれた26歳さん。

26歳さんは、やっぱり大人だな。僕はダメだ……。

軽い自己嫌悪をたずさえ、去り際、耳に入った26歳さんの言葉に、僕は勇気をもらった。

 「じゃあまたな! お疲れっ! カワグチくん!」

俺、カワグチじゃねえし!!!!!!

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